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横須賀市と日本財団。ソーシャルインパクトボンド(SIB)の仕組み生かし、子どもの養子縁組活動促進で行政経費節減へ(FGW)

nihonzaidanキャプチャ神奈川県横須賀市と日本財団は、民間資金で公的事業を進める「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」の仕組みを活用するパイロット事業をすることで合意した。家庭の事情等で児童養護施設に収容されている子どもの特別養子縁組を日本財団が進めることで、横須賀市に生じる行政経費の削減分を「ボンド」のリターンとみなす考えだ。

 

SIBは英国や米国等で実際に投資家向けに債券として発行されている。通常の債券と異なるのは、債券を発行する自治体などが集めた資金で社会的な事業の改革を実施、それによって生じる行政経費の節減分を当該債券を購入する投資家に対するキャッシュフローとする点にある。自治体が税金によって支出する費用が減少するとともに、社会的事業の効果も高まり、投資家にとっては新たな投資商品が生まれる、という一石三鳥のメリットが期待される。

 

今回の日本での横須賀市と日本財団の取り組みでは、実際の債券発行は行わず、児童の特別養子縁組活動を進めている日本財団が、事業費1900万円全額を負担することで、投資家の代わりを務める。家庭での子供の虐待や、育児放棄などの事例が各地で目立つが、そうした子供たちを保護・収容する児童養護施設等の経費増加は自治体の財政にも影響している。そこで、特別養子縁組の形で子供たちを受け入れる家庭が増えると、行政の負担が減ると同時に、子供たちも新しい家庭での生活が可能となる。

 

横須賀市では、養親が必要な子供185人が、擁護施設で暮らしているという。今回の日本財団との合意では、今年度中に4人の縁組を目指すという。仮に4人が18歳になるまで市内の施設で暮らすと、横須賀市は約3530万円の財政支出を続けなければならない。しかし、予定通り、4人の縁組ができると、彼らの生活費等は各家庭で賄われるので、今回の事業に必要な事業費1900万円を差し引いた約1630万円は、横須賀市の財政支出を縮減できることになる。実際に、同市には2つの児童養護施設があるが、それだけでは足りず市外の施設も利用している。、行政の負担も大きくなっている。nihonzaidan2キャプチャ

 

日本財団によると、産みの親が育てることのできない子どもは、現在、日本全体で約4万人いるという。そのうち約85%が自治体等の施設で暮らしている。一方で、日本での養子縁組希望者や里親希望者は急増しており、1万人程度はいると推計されてる。しかし、行政が実施している里親委託制度で2013年度に養子縁組が実現したのは約4,600人だけ。海外主要国と比較し、日本では施設で暮らす子どもの割合が極めて高く、施設を運営する自治体にとっても、施設で生活する子供にとっても、大きな課題となっている。また、2008年には国連から現状改善の勧告を受けている。

 

SIBの仕組みが適用可能な社会課題としては、若者の就労支援(生活保護受給者数の減少、所得税増加等)、高齢者の医療・介護予防(医療費・介護費用の節減)、再犯防止(受刑者の再犯率低下で刑務所費用の縮減)などが考えらえる。また、今回は投資家向けの実際のSIBの発行は盛り込まれなかったが、日本の個人投資家は世界銀行等のグリーンボンドの有力な買い手となっており、環境改善・保護だけでなく、社会改善のために資金調達するボンドが発売されれば、人気商品になる可能性もある。

 

http://www.nippon-foundation.or.jp/news/pr/2015/img/40/40.pdf

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